コロナ後とその先の未来:5Gが日本企業の成長を促す理由とは?

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5G通信が間近に迫る今、その次世代スピード、容量、低レイテンシのメリットを日本企業はどのように享受できるのか?

日本は長いことモバイル通信の世界的リーダーだった。その革新の歴史は世界初の商用モバイルブラウザーベースのWebサービス、モバイルメール、カメラ内蔵の携帯電話などを生み出してきた。しかし近年日本のモバイル環境は容量制限に苦慮し、日本のハードウエア開発者たちはiPhoneのようなグローバルな現象に後れを取っている。

日本の現状

数年前、日本企業は2020年夏の東京オリンピックに間に合わせるべく、5Gの導入に450億ドル以上を投資すると表明していた。新型コロナウィルスの影響で延期にはなってしまったが、日本の5G導入計画に変わりはない。2021年開催の東京オリンピックの成功のためにインフラ整備を行う予定だ。

可能性とチャンス

5G導入が日本に大きなチャンスとなるのにはいくつか理由がある。日本のモバイルネットワークの容量は現在比較的多いために、5Gが導入されれば通信事業者は容量制約を緩和でき、データトラフィックと接続の増加をより適切に管理することができる。さらに今までグローバルな競合企業に席巻されていた仮想及び拡張現実(ARとVR)、そしてモノのインターネット(IoT)などの高成長分野で新しいチャンスが生まれてくる。

また5Gにより日本企業は自動運転車やロボット工学等の分野でより革新力、競争力を増すことができる。ヘルスケアにおける患者の遠隔モニタリングやスマートシティでの災害警報など、新しい付加価値サービスの提供も可能にする。GSMAが5Gが世界経済に2.2兆ドル以上をもたらすと予測する中、5Gで得られる潜在的な価値は非常に大きなものがあるのだ。

新たなユースケースの出現

日本は5Gネットワークのメリットを他の分野でも享受できるチャンスがある。製造業では、工場が5Gを利用して生産性とROIの向上を実現するスマートファクトリーを作るIoTソリューションを強化できる。アメリカの市場調査会社Forrester社によると、グローバルな産業用IoT(IIoT)市場は着実に成長し、2021年末までに1,230憶ドルの価値を生み出すと予測されており、日本もその一部となるであろう。テレビ視聴者はプロスポーツやその他のコンテンツの視聴方法をパーソナライズできるようになり、エンタメ業界も恩恵を受けることができるし、7,000万人のゲーマーがいるといわれる日本で、5Gの非常に低いレイテンシの恩恵を受けながらクラウドベースのゲームを楽しむ人も増えるだろう。

5G ネットワークスライシングは新しいユースケースのチャンスをもたらす可能性がある。企業はネットワークを柔軟なレイヤーにスライスして、正確なビジネスユースケース要件を満たすことができる。日本では手術、ゲーム、自立走行車などが5Gネットワークスライシングの独自分野になる可能性がある。

5Gと新しい日常

これらすべては新型コロナウィルス出現前までは真実だったが、今もそうなのか?私はそう信じる。5Gの潜在的なユースケースはどれもなくなっておらず、それどころか5Gは実際我々の「新しく破壊された世界」においてより重要なテクノロジーになり得るのだ。

5Gは日本における景気回復の鍵となれるし、世界においてもある程度の日常に戻るために5Gは必要になってくる。新型コロナウィルスによるロックダウンの間業績を伸ばした業界について考えれば、まずオンライン小売業が浮かぶだろう。アマゾンの2020年第一四半期の収益は130億ドル増加の1,450億ドルになり、株価は新たな高値を記録した。

オンラインショッピングとロボット配達は今後成長する5Gユースケースになるだろうし、実際、日本は2019年に宅配ロボットを利用している。新型コロナウィルスとそれがもたらす余波で、5Gが多くの宅配ロボットのユースケースを可能にするであろうし、日本にはその環境が整っている。日本はロボット製造において世界をリードしているし、世界的な新型コロナウィルス流行の間、日本のスタートアップ企業は医療用のユースケースや、非接触型配送用ロボットを開発してきた。

5Gはエンタープライズグレードのブロードバンドもサポートでき、これをファイバー接続及びIoTの潜在的バックボーンの実行可能な代替案と考える人々もいる。5Gはまた、ネットワークエッジへのコンピューティング機能の分散を可能にし、あらゆる種類の潜在的な新たな収益のチャンスを作り出す。自動運転車、精密ロボット工学、ミッションクリティカルなAIアプリケーション、モバイルバーチャルリアリティなどのユースケースを含む5Gとエッジコンピューティングの組み合わせを必要とするリアルタイムサービスは、すべてこれから現実のものとなる可能性がある。実に多くの人が在宅勤務をしている今、新たなリモートワークの方法やサービスを可能にすることは非常に重要である。

前進への大きな一歩

GSMAインテリジェンスは、2025年までに日本のモバイル接続の49%が5Gになると予測している。新型コロナ流行前にすでに巨大な潜在的そして革新的なビジネスイネーブラーであったところに、5Gのスピード、レイテンシ、容量は、ビジネス及びその他すべての回復を促進する上でさらに重要になるとみられている。

G20加盟国のビジネス及び科学分野のリーダーたちはG20に書簡を送り、新型コロナに対応しデジタルインフラを緊急に改善するよう呼びかけ、5Gが将来の経済回復の鍵であることを強調した。新しいタイプのインフラを構築することにより、短期的・長期的に日本に利益をもたらす経済の勢いを支え、推進することができる。

Christophe Ozer
クリストフ オゼール

クリストフ・オゼールは現在アジア太平洋地域のセールスヘッド及び日本のヘッドを兼任している。APACのセールスヘッドとして、域内各国チームの売上向上、新規の大規模案件獲得をリード、サポートしている。 一方2012年まで合計で10年以上日本に滞在した経験と、オレンジビジネスサービスジャパンのカントリーヘッドとしての計7年以上(2007-2012 & 2016-現在)の経験から、日本のマーケットに関する知識は深い。 ジャパンのカントリーヘッドとして着実にビジネスの成長を牽引し、日本のキャリア各社とも確固で戦略的なパートナーシップを確立した。オレンジ全社の中で初めてパートナーシップ型ビジネスを成功させたといえる。 ベルギーのリエージュ大学にて販売管理学学士号取得。